ページの先頭です
IIJ.news Vol.188 June 2025
株式会社インターネットイニシアティブ
代表取締役 会長執行役員 鈴木幸一
おおよそ、規則正しい生活をしていたのは、中学生になった頃までの気がする。子供の頃は典型的な早寝早起き坊やで、夕飯の途中、すでに居眠りが始まってしまうので、お風呂も夕食前に入り、食事も一人早めに食べさせないと、食事中にこっくりこっくりしてしまう。8時前には床について、夢のなか。そんな時間に眠ってしまうのだから、朝は4時頃に目覚めて、空腹を訴える。親はたまったものではないので、まだ深い眠りにある家族に迷惑をかけないようにと、枕元におにぎりと魔法瓶に入ったお茶が置かれていた。ともかく、たくさん食べて、よく眠る子供だったらしい。幼児の頃からグズることもなく、空腹を訴えるほかは、何ら手がかからず、戦後すぐの混乱期、子供の世話まで手がまわらない親や大人にとっては、すでにして弁(わきま)えた子だったらしい。
それが中学生になった頃から、親にとって手がかからないということ以外は、大きく変わっていった。もっとも大きな変化は、夜明け近くまで眠らず、乱読する癖がついてしまったことだ。よほどのことがない限り、細かいことに頓着せず、他人と接する際の礼儀以外、過ごし方などは我が子に任せていた親の関心のあり方をいいことに、問題にならない程度に、勝手な生き方を覚えてしまったのである。
それが年齢を重ねるごとに、最低限の常識というか、ルールからも外れるようになってしまったようだ。高校生になると、午前、余裕を持って家を出るのだが、高校の裏門から校庭を抜けて、そのまま正門から出てしまう。そして、根岸線の山手駅から電車に乗って、小さな放浪を重ねた。上野公園の博物館や美術館、京橋のフィルムセンター、あるいは図書館で時間をつぶし、授業が終わる時間に合わせて、帰宅する。そんなことをして、家族が知らないはずもなかったのだが、学校も家族も緩いというか、わかっていながら度量があった時代の空気に救われて、何とか結果だけは人並みからちょっと外れた程度で済んで、社会人になった。
眠りすぎの幼児から小学校時代、理解には程遠い知識と経験しかないのに、読書に耽った中学から高校時代、すっかりいい加減が身についてしまった大学から会社勤めの時代、資金もないのにIIJをつくって、インターネット接続事業から巨大な技術革新を志した40代半ばから現在――これまでの自分を振り返ると、わけがわからなくなる。
ここ20年、桜の季節は、仕事の年度末と、上野で始めた「東京・春・音楽祭」が重なり、ひと月以上も眠る時間が少なくなる。年齢を考えた行動をしないと、大変なことになりますよと、言われ続けているのだが、年齢を考え、リスクを考え、常識に則った行動をしていたら、インターネット事業も、世界的になった音楽祭を始めることもできなかった。
ひっそりと反論するのだが、「子供の頃からおかしかったのだから」というのが本当のところである。連休が始まるというのに、わずかな時間があれば、眠ってしまう今日この頃である。
ページの終わりです