ページの先頭です


ページ内移動用のリンクです

  1. ホーム
  2. IIJについて
  3. 情報発信
  4. 広報誌(IIJ.news)
  5. IIJ.news Vol.188 June 2025
  6. 新社長インタビュー 谷脇康彦が語る 来たるべきネットワーク社会とIIJの役割

新経営陣からのメッセージ 新社長インタビュー 谷脇康彦が語る 来たるべきネットワーク社会とIIJの役割

IIJ.news Vol.188 June 2025

株式会社インターネットイニシアティブ

代表取締役 社長執行役員

Co-CEO&COO

谷脇 康彦

1984年4月郵政省(現 総務省)に入省。同省において郵政大臣秘書官、在米日本大使館ICT政策担当参事官を経て、2013年6月内閣審議官・内閣サイバーセキュリティセンター副センター長、16年6月に総務省情報通信国際戦略局長、17年7月同政策統括官(情報セキュリティ担当)、18年7月同総合通信基盤局長、19年12月同総務審議官(郵政・通信担当)を歴任、21年3月退官。22年1月IIJ入社、同年6月より取締役副社長として経営統括補佐を担当。25年4月より現職。

―― 最初にデジタル経済および市場の分析からうかがいたいと思います。現状はコロナ禍“以後”の流れのなかにありますが、コロナ禍“以前”と比較すると、どんな変化があったでしょうか? また、世界的に見た時、日本のデジタル化はどの段階にありますか?

谷脇:
もともとインターネットは時間と距離の制約を超えるという点で“20世紀最大の発明”の1つと言われていますが、コロナ禍を機にBCP(事業継続性)の面からインターネットは業務上、不可欠であるとの認識が広がりました。
世界的に見ると、日本におけるデジタル化はコスト削減や業務効率化を目的とするものが主流でしたが、欧米ではビジネスに付加価値をもたらしたり、新たな事業創出が志向されてきました。今後、日本のデジタル化は、既存の事業モデルをより魅力あるものにしていくために、デジタル技術を具体的にどう活用していくのかというステージに移りつつあると感じています。

―― 日本企業におけるデジタル化が新たな価値創造につながっていない要因は、どのあたりにあるのでしょうか?

谷脇:
欧米の人は「失敗してもやり直せばいい」と考える傾向が強い一方、日本人はとても真面目です。加えて“ものづくり大国ニッポン”という意識からなかなか抜け出せなくて、パッケージ化されたサービスを使いこなす“モノからサービスへ”という発想転換が根づいていないのかもしれませんね。

―― 企業側からすると、既成のサービスだと、自分たちの課題を解決できないというか、そこまでの期待感が持てていないのではないでしょうか?

谷脇:
それはあると思います。サプライヤーの立場としては「どんな課題がありますか?」と問いかけながら、「それにはこういうサービスがありますよ」といった課題解決に直結した対応が求められているのだと思います。
そこで考えられるのは「個別化」「最適化」「自動化」という3つのキーワードです。まず「個別化」ですが、これは個々のニーズに適したサービス提供です。喩えると、服薬に際しては「大人・1回3錠」などと指定されていますが、そのあたりも体型や症状に合わせて柔軟に調整していくといった内容です。次に「最適化」とは、これからは膨大なデータをもとに、より細かいニーズを把握できるようになります。そこで、農業の作付け時などに粒度の高いデータを参照すれば、収穫増が見込めるといった活用方法です。そして「自動化」は、AIを使うことでプログラミングを自動化できたり、製造工程の一部をAIに委ねるといった用途になります。
日本ではこれから少子化が進み、人口も減っていくなかで、これら「個別化」「最適化」「自動化」が不可欠になってきます。喫緊の課題を解決していくうえで、IIJとしても時宜を得たサービスを提案していかなければならないと感じています。

事業の方向性

―― 次にIIJの事業概要についてうかがいたいと思います。既存のコアビジネスに関しては好調な業績が続いていますが、ここはテコ入れをしていくなど、改善すべきポイントはありますか?

谷脇:
IIJはインターネット草創期からサービスを提供しており、社員の7割がエンジニアという高い技術力を持った企業なので、この特長を引き続き強化していくことが大前提になります。インターネットは枯れた技術ではなく、どんどん進化しているので、最先端の成果を吸収しながら、それらをお客さまにわかりやすいかたちで提供していくことが求められています。
さらに「サービスインテグレーション」と呼ばれる分野では、近年、ネットワーク系サービスとソリューション系サービスの一体化がますます進んでいます。IIJはソリューション系とネットワーク系のサービスをワンストップで提供できるので、この強みを活かした新しいサービスを開発していきたいです。
そこでもやはり安定したネットワークが基盤になるわけですが、かつては固定型の有線系ネットワークとモバイルを主とした無線系が分かれていたのが、近年の利活用では両者が渾然一体となってきました。これはつまり、多種多様なものがネットワークにつながり、ネットワークとソリューションが分けられなくなっていて、デジタル化を突き詰めていくと、旧来の境界がなくなっていくということだと思います。
IIJのポートフォリオには、モバイル系/固定系やネットワーク系/ソリューション系といった領域がすでに組み込まれているので、今後はこうしたアドバンテージを活かして、お客さまのニーズに合わせてカスタマイズ可能なサービスを提供していきたいと考えています。

―― 新規ビジネスに関して注目している分野などはありますか?

谷脇:
ネットワーク社会ではデータ活用のあり方が非常に重要になっており、近年話題の生成AIもデータ流通・処理の加速化装置という見方もできます。だとすると、データを連携したり、つなぎ合わせたりして新しい価値を生み出す「データ連携ビジネス」には大きな伸びしろがあります。IIJはすでにさまざまなシステム間のデータ連携を容易にする「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」を提供していますが、こういったサービスをさらに拡充していきたいです。
それと並行して注力すべき分野が「セキュリティ」です。全てのものがネットワークにつながってくると、あらゆる領域でセキュリティを考慮する必要が生じます。また、これまでセキュリティというと、データを漏えいさせない「コンフィデンシャリティ(機密性)の確保」が重視されてきましたが、今後はデータの改ざんを防止する「インテグリティ(完全性)の維持」も大切になってきます。
さらに、経営層のセキュリティに関する認識は日本企業にもかなり浸透してきましたが、まだ「セキュリティ=コスト」と考える向きもあります。我々としても、セキュリティをしっかり維持することが企業価値の向上につながるといった「セキュリティ=投資」という発想を促す施策を検討していきたいと思います。
加えて、2050年頃まで日本は世界でもっとも高齢化が進んだ国であり続けます。ただ、その後は中国や韓国などアジアの国がどんどん追いついてきて、やがて日本を追い抜いていきます。これは見方を変えると、日本はこの状況を約20年、先取りしているということであり、高齢化に付随する諸課題に対し我々がソリューションを実用化できれば、それがアジアのマーケットでも歓迎されるということです。日本が特異な環境にあるのではなく、前向きな意味で“課題先進国”なのだという意識で臨めばいいのではないでしょうか。

―― 将来の課題に対応できるソリューションを開発しておけば、それが活かされる時代が来るということですね?

谷脇:
先行者としてのベネフィットは必ずあります。そういう意味でも、アジアを含むグローバル市場の開拓は必須で、海外の成長をIIJの成長として取り込んでいけるようにしたい。それは単に収益を上げるというだけでなく、各国・各地域の課題を我々の技術提供を通して、また必要とあらば現地企業ともパートナーシップを結びながら、社会貢献できる企業を目指していきたいです。

若い世代へのメッセージ

―― 近年、IT業界では「エンジニア不足」が課題になっていますが、これからのネットワーク社会を支えていく次世代のエンジニアにメッセージをいただけますか。

谷脇:
若手に対する期待はすごく大きくて、優秀なエンジニアも大勢いるのですが、みんな真面目なんですよね。彼らを見ていて「もっと失敗を経験してほしい!」と思うのです。若い頃は私もいろいろヤンチャもしましたが(笑)、それらはあとで必ず教訓になって返ってきます。
私も30代半ばくらいから、霞が関の役所であったり、民間企業の方ですとか、あるいはまったく別の業界の人たちなど、いろんなところから声をかけていただき、勉強会などに参加してきました。すると、そこでの経験が後々すごく役に立ったりするのです。若いうちは組織の枠に囚われる必要などまったくなく、自分が正しいと信じることをやってもらいたい。万が一、失敗しても、その責任は社長が取ります! だから、どんどん新しいことにチャレンジしてください。

―― たいへん心強いお言葉をありがとうございました!

“インターネットは枯れた技術ではなく、どんどん進化しているので、
最先端の成果を吸収しながら、それらをお客さまにわかりやすいかたちで
提供していくことが求められています。”

新経営陣の紹介

安心・安全を安定的にご利用いただくために

取締役 副社長執行役員

村林 聡(むらばやし さとし)

リスクマネジメント本部、管理本部を所管します。よろしくお願いいたします。IIJはデータセンター、ネットワーク、セキュリティなどのサービスやインテグレーションを多くのお客さまにご利用いただいています。IIJの提供するデジタルインフラは今や企業の事業活動の根幹をなし、障害が発生すると甚大な影響を及ぼします。障害の未然防止や影響の極小化のためには、開発者の高い技術力と品質管理などの高いマネジメント力の両輪が重要です。リスクマネジメント本部は3ラインディフェンスの2線の役割として、データガバナンス、品質管理、障害管理、情報セキュリティ管理のフレームワークを高度化し、1線の技術者をサポートしていきます。そして管理本部を中心に、プロ人材確保・育成に注力します。これらの活動を通じ、お客さまに安心で安全なシステムを安定的にご利用いただき、お客さまとIIJ双方の信頼残高増に努めてまいります。

分掌:管理本部、リスクマネジメント本部所管、(株)ディーカレットホールディングス代表取締役社長

1981年4月、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行。同行において国内支店、システム部門に従事。2009年、株式会社三菱東京UFJ銀行執行役員システム部長を経て、15年6月、同専務取締役コーポレートサービス長兼CIO。17年6月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング代表取締役社長。20年4月、ディーカレット社外取締役。21年6月、IIJ入社、取締役副社長として経営統括補佐を担当、ディーカレットホールディングス代表取締役社長、およびディーカレットDCP代表取締役会長兼社長を兼務。

ビジネスを支えるプラットフォーム

取締役 副社長執行役員

北村 公一(きたむら こういち)

新体制においても、IIJが得意とする「お客さま企業のOA環境をセキュアかつ快適に保つITプラットフォームDWP(Digital Work Place)」の提供と、DWPをさらに高度化するための新サービスのリリースおよび安定運用が最大の営業ミッションになります。加えて、DWPを大幅に拡張し、「お客さま企業のビジネス拡大や新規ビジネスの創出を実現するためのDX(Digital Trans-formation)」をIT面で支えるDXP(Digital Transformation Platform)の展開を現中期(FY2024〜FY2026)の成長戦略の中核に据え、提供を開始しました。実現にあたっては、経験豊富なサービスプロバイダ事業と、お客さま企業が個別に必要とする機能やサービスを提供するシステムインテグレーション事業を融合させ、短期かつ低コストで要件を達成するシステムを構築・運用できるIIJ独自のサービスインテグレーション事業の加速に取り組みます。

分掌:エンタープライズ営業本部、金融営業本部、公共営業本部、アライアンス営業本部、インテグレーション事業本部、グローバル事業本部所管、マーケティング統括本部共同所管、エンタープライズ営業本部長

1978年、新日本製鐵株式会社(現・日本製鉄株式会社)に入社。研究開発本部、エレクトロニクス・情報通信事業本部に勤務後、2002年4月、新日鉄ソリューションズ株式会社に転出。同社にて、04年6月より取締役、09年9月より常務取締役、12年4月より専務取締役、14年4月より取締役副社長執行役員を歴任。この間、産業(製造業)部門、流通部門、鉄鋼部門、テレコム部門、公共部門等を担当するとともに、海外現法、営業統括、ソリューション企画・コンサルティング、IoT等も管掌。19年8月、同社を退職。19年9月よりIIJ顧問、21年6月より専務取締役に就任。ビジネスユニット長を所管。24年4月に取締役専務執行役員に就任。25年4月より現職。

事業投資の方針・運営基盤の強化

取締役 副社長執行役員 CFO

渡井 昭久(わたい あきひさ)

本年4月から新経営体制となりましたが、中長期の経営ビジョン、中期事業計画と業績ターゲットやキャピタルアロケーション等は、従前から変更ございません。引き続き、ネットワークやシステム領域において、高い信頼性と付加価値を重視し、サービス開発やネットワークインフラ拡張等の事業投資を継続していくと共に、サービスインテグレーションやその先のフルアウトソース等の事業モデルにおいて、それらを複合したかたちで最適に提供してまいります。また、データ流通の普及等に向けて、新たな事業領域や付加価値も創出してまいります。これらの根幹としては、人的資本の拡充が重要であり、人材獲得や育成を中心に、事業成長を司る事業運営基盤の強化に努めてまいります。

分掌:CFO、経営戦略本部、財務本部所管、経営戦略本部長、財務本部長

1989年、株式会社住友銀行に入行。同行において国内支店渉外、海外支店業務、本店システム企画を経て、96年、IIJに出向。社長室長として資本政策・提携等、社長特命案件に従事。2000年、IIJ入社。04年より取締役CFOとしてIIJグループ全体の業績・財務管理、IR活動を総括。21年4月より専務取締役CFO。25年4月より現職。

インターネットの新たな可能性

取締役 副社長執行役員 CTO

島上 純一(しまがみ じゅんいち)

1990年代から始まったインターネットの社会実装の歴史は、1992年に創業したIIJの歴史そのものでもあります。さまざまな技術の進化により、インターネットによって大量の情報を容易に伝送・蓄積・処理することが可能となりました。インターネットは新たなイノベーションが生まれる場であり、社会に欠かせないインフラとなっています。インターネットが社会で持続的に有効活用されるためには、インターネット自体の継続的な改善および利用上の技術的・制度的対策が必要不可欠です。私たちはこれからもインターネットの新たな可能性を追究し、技術に裏打ちされた革新的なサービスを提供することで、社会のイノベーションを推進していきます。

分掌:CTO、ネットワークサービス事業本部、モバイルサービス事業本部所管、マーケティング統括本部共同所管

1990年、株式会社野村総合研究所に入社。同社にて企業ネットワークの構築を担当した後、95年に社内ベンチャー(現・NRIセキュアテクノロジーズ)に参画し、セキュアなインターネット接続環境を企業へ提供するサービスを立ち上げた。96年、IIJ入社。IIJやA-Bone(日本を含むアジア太平洋地域の各国を相互に接続する国際インターネット回線網のバックボーンネットワーク)のインフラ構築・運用に従事。2015年より取締役CTO(最高技術責任者)として、ネットワークサービス、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。20年より常務取締役CTO。25年4月より現職。

(写真/渡邉 茂樹)


ページの終わりです

ページの先頭へ戻る